人っ子一人いない山道を行軍、しかし衝撃の結末が…
鹿児島ひとり旅も最終日。前日は妙見温泉に1泊しました。
旅館を出たのが9:30。帰りのバスは11:40分過ぎなので、それまでどう時間をつぶすかを考えます。
妙見温泉周辺には、これといった大きな観光スポットはありません。しかし地図を見ると、温泉街から2kmほどの距離に犬飼滝という綺麗な瀑布があります。
しかも、その近くには道教事件で有名な和気清麻呂公を祀る和気神社があるではありませんか!!
ただ、残念ながら犬飼滝方面へのアクセス方法は自家用車のみ。バスも走っておらず、この辺だとタクシーも見かけません。
和気神社までの行程を入れると、往復で5km近く。しかも地図を見る限り相当な山道。
こんな時、多くの人は「じゃ、やめよう」となります。
しかし、いざ旅先から帰ってきて「やっぱあの時行っておけばよかったぁ!」なんて後悔した経験は、誰にでもあるはず。
俺は行くぜ…。そっと地図をしまい、雄大な霧島の山をキッと睨みつけるのでした。
目標、犬飼滝。全軍突撃!!(注: 1人しかいません)
犬飼滝へ、絶景の片道2.2km
序盤は山道、ほとんど歩道がないので注意
まずは妙見温泉を出るため、妙見大橋を渡って温泉街の裏手へ。紅葉の名残を残す中津川が、美しい。


橋を渡ると、妙見田中会館があります。こちらの裏手の道を進みます。


さて、いかにも山道という場所に出てきました。けっこうな急坂ですが、臆せず進撃。
どんどん標高が高くなっていきます。途中で右手を見ると、下方に農地が広がっていました。


山道の折り返し地点に到着。真っ直ぐ行く道と折り返してより急勾配を登る道に別れます。犬飼滝へ行くには、後者を登ります。
ここは車両の通行もできるようですが、今まで以上に鬱蒼とした道に入ります。ひえぇぇ(-_-;)
途中には民家が数軒あります。おそらく、ここの住民以外が通行することは、ほぼないのでしょう。
途中で老猫さんが「だれだぁぁ?」と言う感じでのっそり出てきました。
写真を撮っていたら、番犬がめっちゃ吼えてきたので、急いで退散。兵は引き際が肝心なのです(そうなのか!?)。


やっとこさこの急坂を抜けると、2車線の道路に合流します。なんとなくホッと一息。
しかし「犬飼の滝まで1.5km」の文字が…。まだそんなにあるんかい!!


けっこうな勾配と犬の追撃で息も絶え絶えだったので、本気で引き返そうかと思いました。
が、私の辞書に不可能の文字はない、という某将軍の言葉を思い出しながら進撃再開。
しかい、沿道の木々が生命感に溢れていて素晴らしい。心なしか、空気も新鮮です。


ある程度進むと、歩道が出現します。ここまで来れば安心(?)です。
車はちょいちょい通るのですが、歩行者とは誰一人会いません。


本当に雄大な山地です。これらの木々の樹齢、どのくらいなのでしょう。
地表は遙か下方にあるのですが、木々は手の届くくらいの距離まで生えています。素晴らしい生命力です。


和気の湯へは行けないのでご注意!
この道は「犬飼霧島停車場線」470号線です。
地図を見ると、ちょうどこの近くにある「和気の湯」という野湯にアクセスできそうですが、ここから和気の湯に行くことはできません。
和気の湯は15mくらいは下方にあり、そこまで行く道路はありません。


和気の湯に行くには、先ほどの山道の折り返し地点を曲がらずに直進する必要があります。
ちなみに、この時和気の湯周辺ではなにやら工事中。発電機の音が響いてみました。
また470号線でも大規模な道路工事をしていて、片側一方通行になっていました。やけに工事が多いのう。
実はこれ、重大なフラグだったのですが、私はまだそれに気づいていません…。
犬飼滝展望台に到着!しかし・・・
さて、汗だくになりながら歩くこと20分超。ようやく犬飼滝展望台が見えてきました!
色づいた紅葉がとても綺麗です。ここまで一切歩行者とすれ違いませんでしたが、駐車場には車が。なんとなくホッとします(笑)


こじんまりとした展望台。誰も居ないので、貸切です。
一帯には、滝の轟々とした音が鳴り響いています。気のせいか、滝下からの吹く風にはマイナスイオンの香り(なのか!?)が。
ここから滝壺まで降りられる遊歩道があるので、まずはそちらへ向かいます。


遊歩道へは、展望台のすぐ脇から降りられます。
しかし・・・。
・・・・・・・・・。
「がけ崩れ・倒木のため、通行できません 霧島市」(※2022年11月当時)
おおおおおおおおおおお
がけ崩れ!?倒木!?
ここまで人っ子一人いない山道を2キロ超歩いて来たのに!
そういえば、今夏は台風や大雨が九州各地に被害をもたらしていました。ひょっとするとさっきの和気湯周辺の工事も、それの復旧工事だったのかも…。
しばらく放心状態でしたが、気を取り直して展望台へ向かいます。しかし・・・。
この辺に犬飼滝があるはずなのですが、音はすれども姿は見えず。
一段高い場所に上ってみました。すると・・・。
お わ か り い た だ け た だ ろ う か 。
これが、犬飼滝です。
ち、小さい・・・。
悔しいので、デジカメのズームで拡大してみました。
轟々と流れる水は、さすがは名瀑と言う感じです。しかし、うーん…。
こりゃ、展望台じゃなくて遠望台だな。
しかし、こんなに距離を隔てても感じ取れる滝の豪快なパワー。滝壺の近くで見られたら、きっと最高だろうなぁ~!
和気清麻呂公を祀る和気神社
品種日本一の「藤まつり」
気を取り直して、和気神社へ。展望台から道を隔てた反対側に、神社への階段があります。
階段を登ると、和気公園という広い公園があります。
この公園には、種類の多さでは日本一の100種類の藤が植えられており、毎年4月下旬~5月上旬に行われる「藤まつり」では多くの人で賑わうそうです。


藤棚の総延長は500mほど。満開の頃は、さぞ壮観でしょう。
全国的にも珍しい、猪が守護神
公園を抜けると、和気神社の入り口です。
ご祭神は和気清麻呂公。
神護景雲3年(769年)、宇佐八幡宮神託事件で無実の罪を着せられた和気公が、この地に配流になったと伝わっていました。


時代は下って嘉永6年(1853年)、島津斉彬公がこの地に松を手植えした際に、和気公の遺跡調査を実施。
その結果、和気公が配流になった地がここだと11世紀の時を経て確定しました。


鳥居の横には恐ろしく大きな猪の絵馬が。
伝説によると、配流になった和気公の乗る御輿を300頭もの猪が先導したそうです。
そのため、この和気神社は全国的にも珍しい猪が守護神の神社で、境内には狛犬の代わりに狛猪があります。


「宇佐八幡宮神託事件」とは?
奈良時代、宇佐八幡宮から「弓削道教を皇位につけるべし」というご神託が下った。道教は、時の称徳天皇の寵愛を受けていた皇統とは何の関係もない僧侶だった。
和気清麻呂が「本当かよ」と思い宇佐八幡宮へ再度勅使を使わすと、今度は「皇統以外を帝に立てるべからず。無道の者は排除せよ」とのご神託が下った。
これを称徳天皇に報告すると、大いに怒りを買い姉弟もろとも大隅国へ流された。
坂本竜馬夫婦喧嘩の地
この和気神社や犬飼滝は、坂本龍馬と妻・お龍が新婚旅行で訪れた地です。
境内にも、その案内板が建っています。


もっとも、和気神社の創建は昭和21年(1946年)。
龍馬夫妻が訪れた当時は、斉彬公お手植えの松があっただけだといいます。
しかしネットで見かけた情報によると、当時龍馬夫妻の夫婦仲は冷え切っていたそうで、ここに来ても1言も口を利かなかったそうです。
本当かよ。
ナニモノカが居そうな、静謐な境内
平日だったので参拝者は誰もおらず、しんとしています。
お手水でお清めをしてから、境内へ。


鬱蒼とした木々に覆われており、物音もほとんどしません。
霧島山地の清らかな空気をたっぷり吸って、心が洗われるようです。



社務所は空いていましたが、誰も居ません。でも、境内に誰かがいる不思議な感覚が。
…社務所の脇になぜか郵便ポストがあるのですが、ガムテープで塞がれており投函不可能。


境内に、ナニモノかがいる。
…私は霊感の類はないのですが、なんとなくそう感じました。
ビビリながら本殿に参拝。心なしか、地面の排水溝が猪の鼻に見えてきました(本当)。


こちらの神社は学問・建築・交通安全にご利益があり、地元の方から愛されているそうです。
遂にナニモノカと遭遇、その正体は…!
境内に不思議な一角が。摂社のようです。
ここに祀れているのは、「和気ちゃん」…?


なんのこっちゃ、と思いつつ裏手に回ると…。


!!!
白い猪が!!
さっきからなんか気配を感じると思ったのは、君だったのか!!
平成20年生まれの14才。飼育下の猪の寿命は10~20才ほどらしいので、まぁまぁ老齢のようです。
写真を撮っていたら、起こしてしましました。すまんすまん。
神様の使いを閉じ込めるなよと思いつつ、元気でな、と言い残して神社を後にしました。
【まとめ】事前情報に注意、脚力に自身のある方は行く価値アリ
妙見温泉から往復5kmの山道でしたが、途中に人工物はほとんどなく新鮮な霧島山地の空気をたっぷり吸いながらハイキングが楽しめます。
…とは言え、行程の半分は歩道がなかったり、また野生動物の出現も予想されるのでそれなりの心構えをしてから向かったほうが良いでしょう。
犬飼滝は、私が訪れた時は残念ながら滝壺への遊歩道が閉鎖されていましたが、きっと滝壺間近からながめる瀑布は、壮観でしょう。
和気神社には、どことなく静謐で優しい空気が漂っており、都会に疲れた心へパワーチャージするには最適でした。
行く前は「わざわざ5kmも歩いて行く場所だろうか」と半信半疑でしたが、ここは時間と労力を費やしてでも訪れる価値がある、と自信を持って言えます。
でも、脚力に自信のない方はなるべく自家用車での訪問をオススメします。
ちなみに配流になった和気公は、道教の失脚後に名誉を回復され、京へ帰還。晩年まで時の天皇の側近として大活躍しました。
よかったね!!