廃寺から再興した名刹 四国八十八ヶ所霊場30番札所・善楽寺へ参拝【四国ひとり旅⑧】

一時は廃寺にも!?紆余曲折の後に復活した土佐の名刹

 

高知市の東端・一宮しなね地区にある善楽寺

 

古代の創建と伝わる土佐神社の別当寺として創建されましたが、明治時代には一時廃寺にされた悲劇の過去があります。

 

 

復活後は札所の正当性を巡って争いが発生するなど、まさに紆余曲折の歴史を潜り抜けてきた名刹です。

 

境内には首から上の病にご利益がある梅見地蔵があり、眼病や耳・鼻の病気のほか、ノイローゼや脳疾患の平癒を願う参詣者の信仰を集めています。

 

いかにも四国八十八ヶ所のお寺らしい、落ち着いた境内へ初詣してきました。

 

 

四国八十八ヶ所霊場30番札所・善楽寺

 

善楽寺は土佐神社のすぐ隣りにあります。

 

市内中心地からのアクセスは、高知駅バスターミナル・はりまや橋からバスに乗って20分ほどの一宮神社前停で下車。

 

土佐神社の参道を歩いて、鳥居の直前を右に曲がると善楽寺に到着です。

 

 

 

 

一時は廃寺になった歴史

この善楽寺には、まさしく紆余曲折の歴史があります。

 

大同5年(810年)、土佐神社の別当寺(*神仏習合時代、神社を管理するために置かれた寺)として建立。

 

当時は観音院と呼ばれていましたが、戦国時代に戦火で焼失。のちに再建し長福寺と改名しますが、江戸時代に徳川家重の幼名(長福丸)を考慮し現在の善楽寺に再改名

 

そして明治時代に神道指令が出されると、善楽寺は廃寺になり30番札所は市内にある安楽寺に移されました。

 

▲安楽寺。高知市の中心部にあり、菅原道真の長子・高視によって建立された。
引用元: 安楽寺 (高知市) - Wikipedia (C)Reggaeman

 

また、この時の混乱で護摩堂不動明王像が行方不明になっています。

 

昭和に入り、埼玉県にあった東明院を現在値に移転させる形で善楽寺が再興

 

しかし札所の正統性を巡り安楽寺と論争が起こり、60年以上もの間30番札所が2つ並立する状態が続きました。

 

平成6年(1994年)になって、ようやく札所を善楽寺のみとし、安楽寺を奥の院とすることで落ち着きました。

 

 

 

【境内】対照的な2つのお堂が特徴、現在は女性住職が管理

 

直前まで土佐神社を参拝していました。

 

鳥居をでてすぐ隣が善楽寺なのですが、神社よりも参拝客が少なくてちょっと寂しいです。

 

 

せっかく来たなら、一緒に参拝すればいいと思うのですが…。

 

入り口では、大きな十一面観世音菩薩像が出迎えてくれます。

 

 

「人の恨み・反感・憎悪等をはね退け」てくださるそうです。

 

なんとなく、芸能界志願者の信者が多そう(笑)

 

 

お正月なので、謹賀新年の墨書が置いてありました。

 

 

お手水にはビー玉が敷き詰められていて、美しいです。

 

実は隠れインスタ映えスポットかも!?しれません(笑)

 

 

 

 

【本堂】昭和57年に改築された近代的な造り

こちらが本堂。ご本尊は阿弥陀如来坐像

 

阿弥陀如来には死後、極楽浄土へ往生させてくれるご利益があります。

 

 

こちらの本堂は昭和57年に改修されており、近代的な建築が特徴です。

 

本堂脇には四国八十八ヶ所名物の小坊主看板。少女漫画のようなつぶらな瞳をしています。

 

 

ちなみに、前日訪れた龍光寺の小坊主看板はこちら。

 

 

目が怖っ!!(笑)

 

こちらは不動明王像。厄除けにご利益があります。

 

 

かつての不動明王像は、先述の通り廃仏毀釈のゴタゴタで行方不明になっているので、こちらは近年新造されたものだと思われます。

 

 

 

【大師堂】再興直後から存続する木造建築

本堂向って左にあるのが、大師堂。善楽寺再興から2年後の昭和9年の建立で、本堂とは対照的な木造建築です。

 

「厄除け大師」として有名で、災難厄除・交通安全のご利益があります。

 

 

弘法大師像の衣は檜皮色なのですが、墨で黒く塗られていたために廃仏毀釈の難を逃れたと言われています。(黒色ならいいのか?等、イマイチよく分からないのですが…)

 

ちなみにWikipediaだと「大正時代の建立」とあるのですが、善楽寺の再興自体が昭和5年なので、たぶん間違いです。

 

 

 

【梅見地蔵】首から上の病気にご利益

こちらは梅見地蔵。首から上の病気に利益があるとのことで、念入りに祈願。

 


文化13年(1816年)の建立で、かつて大師堂横の梅を仰ぐような位置に鎮座していたことからこの名で親しまれています。

 

脳の病気やノイローゼ、眼病・鼻・耳等の病気にご利益があり、平癒を願う参詣客が多いようです。

 

 

 

【アクセス】市内中心部からバスで20分

 

この善楽寺は中心部から外れた寺にありがちな殺伐とした印象はなく、境内全体がとても綺麗に清掃されていて、明るい雰囲気に満ち溢れていました。

 

参拝後に境内のトイレを拝借したのですが、「トイレだけご利用の方も、本堂に一礼お願いします」という趣旨の張り紙がしてあって、思わず「うん、そうだよな」と頷きました。

 

人としての基本である「感謝・お礼」の気持ち。雑多な日常生活で知らず知らず疎かになりがちなのを、気づかせてくれました。

 

 

2016年夏に、善楽寺の歴史でも初めての当時32歳の女性住職が誕生しています。

 

女性が住職を勤める寺は、四国八十八ヶ所札所の中でも5つしかないそうです。

 

 

女性らしい心遣いを随所に感じる、優しいお寺でした。

 

◆善楽寺: アクセス情報◆ 【住所】〒781-8131 高知県高知市一宮しなね2-23-11

【バス】高知駅からG5.6.7.12系統バスに乗車、一宮神社前停で降車して徒歩3分
【電車】JR土讃線・土佐一宮駅から徒歩18分
【車】高知道・高知ICから県道384号経由で約2km・無料駐車場あり